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環境悪化と毒藻の発生   

アメリカのテロ    
 9月11日夜10時頃、台風15号が気になりテレビをつけたら、旅客機がニューヨークの世界貿易センターに衝突して燃えていた。まもなく、別の旅客機が急旋回してもう一つのビルに衝突し、その後ペンタゴン(国防総省)もやられたらしい。これはイスラエルの横暴を助けているアメリカに対するパレスチナ関係者の神風特攻隊的攻撃で、窮鼠が猫を噛んだな、と直感した。アメリカ人の多くは、明るく勤勉で善良だし、罪もない犠牲者には大変気の毒だが、結果に必ず原因がある事は、自然科学だけでなく、社会科学、歴史学の法則でもある。あれだけのテロにはそれ相応の大きな原因がいくつもあるように思えた。
 考えてみれば、アメリカ移民は、アメリカ原住民を虐殺して次々と土地を奪い、正義と自由、民主主義のアメリカを建国した。その後、ハワイに捕鯨港を作ると言って植民地化し、さらに鎖国中の日本を黒船で脅迫して開国させ、不平等条約を結ばせた。中南米はもとより、日露戦争の頃には20万人以上のフィリッピン人を虐殺し、植民地とした。アメリカの真似をした日本も富国強兵策で領土を広げたが、最後は原爆でとどめを刺された。その後アメリカは、韓国、台湾、南ベトナムなどで数々の傀儡腐敗政権を作り、ベトナム戦争では完全に失敗した。
 中東では、イギリスと謀り、パレスチナの土地を奪ってイスラエルを作り、イスラエルがたびたびパレスチナなどのアラブ諸国に侵略・占領・入植しても黙認し、軍事的、経済的援助を行ってきた。
 また、アメリカ自身は核開発・核攻撃をしておきながら、他国が核を持つと厳しく制裁する。世界一の核保有国にこそ、軍事的経済的制裁を行うべきではないだろうか?
 経済面では、アメリカは自国の企業が不利になると、米国企業の奮起を促すのではなく、相手国企業に対してスーパー301条を発動して莫大な関税をかけ、罰金も課して来た。自分達が先に犯した紛争の原因は棚上げし、自分達がやられた所から軍事的・経済的戦争が始まった事にし、腕っぷしが滅法強くて戦争に勝ってしまえば、アメリカの戦争はいつも自由と正義の為だった事になる。日本のように負けてしまうと、戦後60年、ずっと平和国家で頑張って来ても、永久に侵略国家の汚名から抜け出せない。
 環境に対してもアメリカのやり方はひどい。クリントンの時に散々ごねてやっと合意した地球温暖化防止の京都議定書なのに、ブッシュは国益を損なうからと言って批准しない。環境を破壊し、地球を破滅に導いてでもアメリカの利益を図る。これら数々のアメリカの行動は果たして自由と正義の為なのだろうか。只のわがままのし放題に似ている。テロは人類共通の敵だが、アメリカによる環境破壊は人類だけでなく全生物共通の大きな敵ではないだろうか。地球はアメリカ人だけの為にあるのではない。
 自由と正義のアメリカを嫌う人は案外多く、アメリカは報復が恐いから常に戦力的に優位でないと不安になる。従って、アメリカ社会から銃を無くすことは不可能だし、軍備縮小も基本的には無理だろう。常に過剰な防衛と攻撃を行い、それがまた新たなテロを招くのではないだろうか。アメリカはいつも自分達の目先の利害に依って政策や敵味方がコロコロと変わり、全世界の為の首尾一貫した哲学が欠如しているようだ。
 
毒を持った珪藻
 さて、そのアメリカ国境に近いカナダ東海岸のプリンス=エドワード島で1987年、患者107名、記憶喪失12名、死者4名の食中毒事件があった。患者はいずれもムラサキイガイを食べた人達であった。貝が食べたある種の珪藻が神経毒のドウモイ酸(DA)と言うアミノ酸を持っており、それが記憶喪失を起こさせる事が分かった。それまで、藍藻とか渦鞭毛藻(うずべんもうそう)と呼ばれる藻で毒素の見つかるケースがあったが、珪藻では初めてだった。DAを持つのは、珪藻中で2番目に大きく900種以上を数えるニッチア属(Nitzschia)であったが、この食中毒を起こしたニッチアは形態的にも他のニッチア属とは違いのある事が分かり、ニセニッチア属(Pseudo-nitzschia)と命名された。
 DAに依る被害は、オーストラリア、デンマーク、フランス、アメリカでも発生した。1999年アメリカで、DAを持ったニセニッチア属の藻を、カタクチイワシが大量に食べ、それをカリフォルニアアシカが食べて400頭も死んだ。毒素の濃縮と食物連鎖である。
 アイルランドやスコットランド、フランスのブルターニュ地方にはケルト人が住んでいて、彼等は海藻や貝、魚など、海産物をよく食べるが、スコットランドでは、ニセニッチアを食べたホタテ貝を食べて、人間が中毒を起こした。また、ベトナムのドソンのエビの養殖池でもニセニッチアが発見された。ベトナムのエビは日本にも輸入されるので、充分な注意が必要である。また、同種の藻は岩手県の大船渡湾でも見つかった。

自然環境の悪化と珪藻毒の産生
 海産珪藻分類学者の高野秀昭博士は1990年代にニセニッチアの一種(Pseudonitchia multistriata)を報告したが、この珪藻は最近イタリアのナポリでも見つかり、毒性を持つ事が判明した。同じ種でも環境条件によって毒の有無、強弱が異なるようで、ニュージーランドで発見された同種の藻は無毒だったと言う。また、種によって毒を産生する時期が異なり、ある種(P. pseudodelicatissima)では活発に増殖中の対数増殖期に産生し、他の種(P. multiseriesP. seriata)では増殖し終わった定常期に産生するそうだ。毒素産生のメカニズムについては不明のことが多いが、細菌が多いと毒素の産生が多く、細菌がいないと毒素は半減するという。珪藻などに依る毒素の産生は、富栄養化して環境が悪化し、大量繁殖した細菌に対する防御機構なのかも知れない。藻に毒を産生させないためには、大量の細菌が繁殖しない様に、環境を良好に整えることが重要であろう。
 テロも人間社会にとっては一種の毒素である。毒素に対して、アメリカのように強引な戦争をすれば、テロは益々頻発し、規模も大きくなるだろう。毒素をなくすには、アメリカは独善的な自由と正義と民主主義、独占的な資本主義と軍国主義、そして環境破壊を改め、価値観の異なった社会、文化、宗教などを理解するように努めねばならない。日本の政治家も、テロの内容や背景が分からぬうちから「強くアメリカを支持する」と言うような、軽はずみな言動を慎み、テロの真の原因を探るべきである。結局、自衛隊の海外派兵を強行してイラク戦争に参加したが、こういう時こそ、日本は平和憲法の哲学に沿って、世界平和をリードして貰いたい。このようにして地球環境を住みやすく整えれば、珪藻の毒素がなくなるように、テロは自然に減少していくのではないだろうか。

2001.10

クョスコニョ    [1] 
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