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  洗剤の安全性と毒性(1) 石鹸と台所用洗剤 
  洗剤の安全性と毒性(1) 石鹸と台所用洗剤            

温泉と腸内細菌
 車に乗って後部座席の荷物を取ろうとしたら激痛が肩に走った。五十肩と言われ、病名では若返ったので満更でもないと思っていたら、今度はギックリ腰になった。治療の為に富山市内の温泉にいくつか入っているうちに、有り難いことにギックリ腰は改善した。最近の富山市内の温泉は1000メートル以上、時には2000メートルも掘る。pH8ぐらいの弱アルカリ泉で肌がつるつるになり、透明で茶色を帯び、トロッとして、筋肉痛、神経痛、五十肩、ギックリ腰などに効いて、私にぴったりだ。
 ところが、男風呂を見ていて変なことに気付いた。脱衣場では何の問題もないが、風呂場では湯船に入る前に体を流す人が少ない。尾篭な話で恐縮だが、たとえ体を流してもお尻を洗う人は殆どいない。私が最近十回以上温泉に行き、好きではないけれど十数人観察したところでは、お尻を洗っているのは私の他にはたった一人だった。
 最近はウォッシュレットが普及してきたとはいえ、用便後は紙で拭くことが多い。肛門の周囲にはどうしても大便が残る。大便の重さの半分以上は細菌で、大便1gには1000億個以上の多種多様な細菌がいる。仮に、1人が0.1グラム湯船に持ち込んだとすると、100億個以上の腸内細菌が持ち込まれることになる。100人だと1兆個である。その9割以上はバクテロイデス・ユウバクテリウム・大腸菌などだ。年齢や個人に依り腸内細菌の種類や数は様々で、乳幼児ではヨーグルトで有名なビフィズス菌が多く、老人ではビフィズス菌が消え、有害物質を作るウェルシュ菌が多くなる(光岡知足、腸内細菌の話、岩波新書)。大腸菌0157株には毒性があり、体力の弱い人ほど危険である。中世のパリ。朝、市民が2階の窓から汚物を道に捨てる絵がある。ヴェルサイユ宮殿にも便所がなく、コレラやチフスなどの伝染病が度々大流行した。それに反し日本人は清潔で風呂好きで、昔は風呂屋での入浴作法も良かった筈だ。しかし現在、女風呂は違うらしいが、富山の男風呂は中世のパリに近づいているようだ。風呂やプールに入る前に、お尻をよく洗うことは公衆衛生上大切である。

石鹸の性質と発見のきっかけ
 公衆衛生といえば、石鹸の果たした役割は偉大である。石鹸は脂肪酸のアルカリ金属塩である。石鹸を作るには大豆・菜種・ヤシなどの植物、または、牛・鯨など動物由来の食用にもなる脂肪に、苛性ソーダ(NaOH)を加えて高温で加水分解する。脂肪を分解して得られた脂肪酸は、ナトリウム・カリウムのようなアルカリ金属と反応して石鹸が出来る。この石鹸の分子は脂肪酸の部分で油と混じり、アルカリ金属の部分で水に溶け、油と水の両方と結合するので(界面活性剤)、油汚れを水で洗い流す事が出来る訳である。石鹸は、泡立つ濃度では、細菌を始め種々の生物の細胞膜を構成する、蛋白質を含んだ脂質を溶かし、高い殺菌力と洗浄力を持ち、泡立ちが消えると急激に殺菌力も洗浄力も失う。石油由来の合成洗剤が洗浄力を失ってもなお、ベンゼン環など石油自体の毒性を持つのとは異なる。
 石鹸発見のきっかけは、太古の昔、我々のご先祖様が焼き肉を食べた際、したたり落ちた油がカリウムを多く含んだ草木灰と反応した。これを手や食器につけて洗ってみたら、意外に油汚れがよく落ちる事に気付いたからだと言われる。経験した人もいると思うが、これがいわゆるカリ石鹸(薬用石鹸)で、普通に使うナトリウム石鹸より柔らかく、殺菌力が強い。殺菌力が強いのは、カリの方が生体膜との親和性が良いからだろう。カリ石鹸は、火を使い始めた人類、例えば3万年前のクロマニヨン人や15万年前のネアンデルタール人はおろか、50万年前の北京原人も使ったかも知れない。油の乗った熊、猪、サンマなどを食べた我々の先祖も、カリ石鹸に気付いたに違いない。いずれにしても石鹸は、合成洗剤とは比較できない程の長い歴史があり、その安全性は証明し尽くされている。 
 
ミカヅキモは安全性のバロメーター 
 石鹸の安全性を見るために、私はミカヅキモを使った。ミカヅキモには雄と雌があり、それぞれ1日にほぼ1回分裂する。また、十分に増えた雄と雌の細胞を混ぜると恋をして丸い接合子を作る。図の横軸は洗剤の濃度で単位はppm、つまり100万分の1を表す。従って、最高濃度の500ppmは0.05%である。縦軸は洗剤を含まない培地を使った時の増殖率(○)や接合率(●)を1とした場合の、各濃度における相対的な増殖率と接合率である。また、異常接合子の出現率は(X)で示している。石鹸の毒性は、図左のように、増殖率と接合率の両方でほぼ同じで、5ppm以下では全く無毒だが、15ppmで毒性が現れ、50ppmでは増殖も接合も完全に抑制された。この石鹸は大豆油製だが、基本構造の似た我々人間の、蛋白質や炭水化物にまみれた油汚れをとてもよく洗い落としてくれる。
 
図左. 石鹸のミカヅキモの生殖に対する影響。増殖(無性生殖)と接合(有性生殖)に対して同じ濃度で影響が出てきている。 
図右. 除菌のジョイ(台所用洗剤)のミカヅキモの生殖に対する影響。増殖(○)に対しても毒性が強いが、接合(●)に対してさらに低濃度で影響が出てきており、異常な形態の接合子(X)も高頻度で出現している。

台所用合成洗剤の毒性
 大学で実習を行い、学生が普段使っている台所用の洗剤を持って来て貰い、その毒性を皆で調べた。その結果、毒性の強いものから順に、除菌のジョイ・ママポケッティー・チェリーナ・ジョイ・チャーミーコンパクト・ファミリーフレッシュ・ディッシュドロップス・大豆油石鹸・ヤシノミ洗剤となった。低毒性で安全と言えるのは最後の3つだけで、特に最初の3つは劇薬なみの猛毒性があり、これを台所で使うのは非常に危険である。台所用の洗剤で野菜を洗う人がいるが、とんでもない話で、環境にも悪い。例えば、除菌のジョイ(図右)は、増殖や正常接合子形成だけでなく、異常な形態の接合子が高頻度で出現する。それも考慮に入れると、石鹸よりも200倍も毒性が強いことになる。合成洗剤だけでなく、猛毒の殺菌剤が入っているからだろう。
 結局、合成洗剤は冷水によく溶けるが、原料は石油で毒性があり、化学構造は生物油とは異なる。理論上、我々生物の油汚れを落とす力は石鹸よりも低い。我々は洗剤会社の宣伝に乗って、洗剤の名前・色・容器に惑わされることなく、太古の昔から人類が使って来た石鹸を使うのが、一番安心なのではないだろうか。(続く) 
2006.04
クョスコニョ    [1] 
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