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  洗剤の安全性と毒性(3)洗濯用洗剤  
  洗剤の安全性と毒性(3)洗濯用洗剤  

メダカの学校の環境学 
 今は大学院で生物学の研究をしている友人の息子A君は、中学生だった頃、夏休みの自由研究として富山市内の工場の排水の毒性調査をしたいと言って、私に相談して来た。友人の家を頻繁に訪ね、ミカヅキモや環境の話をし過ぎたようだ。しかし、ミカヅキモで実験するには、特殊な薬品を使って特別の培地を作り、無菌培養をしなければならないし、顕微鏡もいるし、一般の人にはかなり難しい。そこで、私はメダカを検定生物にしたらどうだろう、と提案した。5リットルの梅酒のビンを10個ほど購入して貰い水槽とし、そこに各工場の排水とメダカ20匹と水草や藻を入れ、明るいベランダに並べ、毎日メダカの泳ぎ方や生死などを観察する、という計画である。A君は私の提案を受け入れ、実験を始めた。ところが2〜3日もすると、綺麗な水を入れた水槽も含め、全てのメダカが死んでしまったという。状況を見に行くと、明るいベランダに置いてあった水槽はいつのまにやら、雨風の入らない暗い座敷の真ん中に鎮座している。実験を大切に思う気持ちが伝わっては来るのだが、どうもこれが怪しい。ベランダは雨風も入り、少々汚いが明るい。明るいと、水草や藻が炭酸ガスを吸い、酸素を水中に出して光合成をし、メダカの糞に含まれる有毒なアンモニアを吸収して成長し増殖する。また、酸素を好む細菌(好気性細菌)がメダカの老廃物を分解し、植物に吸収され易くなる。このようにして、水槽の中ではメダカと植物と細菌が互いに助け合って皆が生きて行ける。しかし、水槽を暗い所に置くと、植物が酸素を放出しないから、メダカの糞は酸素嫌いの別の細菌(嫌気性細菌)に依って分解され、アンモニアばかりか、メタン、硫化水素などの有毒物質を発生して水が腐り、綺麗な水を使ったメダカまで死んでしまったのだろう。
 こんな訳で、雨風に当たり、見た目は少々汚いかも知れないが、メダカを入れた水槽を明るいベランダに置いて、実験をやり直すのが良いだろうと提案した。A君がその通りにすると、実験はうまく行った。

洗濯用洗剤の毒性 
 実験と言えば、すでに洗剤の安全性と毒性
(1)(2)で述べたように、我々の健康を損ね、環境破壊が心配される台所用合成洗剤やシャンプーは全世界で大量に使われてるが、ミカヅキモテストをすると、昔の猛毒の農薬かそれ以上に毒性の強いものもあった。台所用洗剤を食器はおろか野菜洗浄にまで使う人も居り、入浴時にはシャンプーとして頭や体に振りかける。我々がこれらの洗剤を使うと、人によっては肌荒れやアレルギーを起こす。たとえ急性の障害が出なくても、長い間使って安全だという保障は全くない。
 洗剤は普通、台所や便所から出た生活排水とともに下水処理場に流れて行く。下水処理場では、大量の泡状の空気を送り込み、好気性の菌(カビ)や細菌が、大量の高分子有機物を、水と炭酸ガス・低分子有機物にまで分解する。ところが毒性の強い洗剤を使うと、これら微生物の発育が悪くなり、その分だけ下水処理能力が落ちてしまう。これが地球規模で行われると、川や海を汚染し、その影響はじわじわと後代に及ぶだろう。
 さて、洗濯用洗剤も、様々な製品が大量に販売されている。昔は洗濯石鹸を衣服につけ、暖かい風呂の残り湯を入れたたらいの中で洗濯板などを使って洗濯したが、現在は、洗濯機の中に合成洗剤を放り込んで洗濯している。洗濯機を使うには、水にもよく溶ける合成洗剤が便利なのだ。しかし、意外かも知れないが、人間の脂肪成分に近い動物や植物の油脂で作った石鹸に比べ、石油から作った合成洗剤の洗浄力は劣る。それで、蛋白質分解酵素や漂白剤を入れて、洗浄力不足を補っている。
 私は、洗濯用洗剤にも、台所用洗剤やシャンプー同様、毒性の強いものがあるのではないかと思い、学生と一緒にミカヅキモテストをしてみた。その結果、毒性の強いものから順に、液体アタック(TU『毒性値』は2000〜20000でC類)、エマール、トップ、ニュービーズ、ニュークリーン(図と写真を参照)、アクロン、LOC、スパーク、アリエール、ソフランC(以上、TUは200〜2000でB類)、ザブ、大豆油製粉末石鹸、粉末アタック(以上、TUは200以下でA類)となった。
 台所用洗剤では、ママポケッティーの毒性がD類で強毒性、除菌のジョイ、チェリーナ、ジョイがC類で、シャンプーでは、メリット、フケ用リジョイの毒性がC類であった。しかし、洗濯用洗剤では液体アタックの毒性値が僅かに2000を越えてC類となっただけで、全体的に毒性が低く、私の心配が杞憂であったのは幸いであった。
 
グラフの説明:ミカヅキモの生殖に対する洗濯用洗剤ニュークリーンの影響。環境ホルモンのように、増殖(○)よりも接合(●)に対して非常に低い濃度で影響が出ている。異常接合子形成率(X)も高い。 写真の説明:洗濯用洗剤ニュークリーンの細胞の大きさに対する影響。左から0ppm、1.5ppm、5ppm、50ppm。

環境ホルモンかも知れない洗剤
 ところが、例えばニュークリーンの場合を少し詳しく見ると、細胞1個が2、4、8個と倍々に増える無性生殖に対する50%効果濃度(EC50)が37ppmとなって毒性が低いのに対し、接合子形成に対するEC50は1.1ppmで毒性が強く、前者と後者の比(REC50)は32にも及ぶ。つまり、ニュークリーンはミカヅキモにとっての環境ホルモンである。また、ミカヅキモの正常な細胞は約300ミクロン(0.3ミリ)なのに、1.5ppmのニュークリーンでは330ミクロンと長くなった。ところが、さらに濃度を上げて5ppmにすると270ミクロンとやや小さくなり、50ppmではさらに小さくなって255ミクロンとなった(写真)。グラフを見る限り、良く増殖している筈の1.5ppmや5ppmの濃度でも、細胞レベルでは異常が生じている。総合毒性値(TU)が小さいからと言って安心出来ないのだ。
 さらに、ニュークリーンのように、REC50が大きな値となって環境ホルモンではないかと疑われたり、濃度が高くなると細胞が小さくなるなどの現象は、例えばニュービーズや液体アタックでも見られた。但し、同じアタックという名前でも、液体アタックのTUが2058であったのに対し、粉末アタックのTUは10分の1ないし55分の1程度で、TUは遥かに低いことも分かった。

循環型社会は自然の摂理
 自然界の植物、動物、細菌は各自の役割を持ち、互いに助け合って生きている。その中で、生態系の最も下部にあって、生態系全体を支えている植物の具合が悪くなると、生態系全体が働かなくなる。メダカの飼育や実験の規模はとても小さいが、一つの生態系であり、植物やバクテリアの自然界における重要性と、地球規模での大規模な環境破壊の恐ろしさを教えてくれる。ミカヅキモテストの生態系の規模はもっと小さいが、矢張り生物にとっての、環境の重要性を教えてくれる。
 全ての生き物の中で人間だけが肉体の他に霊魂とか心を持つのではない、と私は思う。私は宗教家ではないし、死後、霊魂が極楽に行くか地獄に行くか、というようなことはわからない。しかし、我々の肉体は死後あの世とか、極楽とか地獄に行くのではなく、確実に此の世、即ちこの地球上のどこかに留まって、次の生物の誕生や成長に再利用される。つまりリサイクルで、食物連鎖の概念であり、また、輪廻(りんね)の思想とも通じているように思う。我々が全ての命を大切にし、環境を大切にしなければならない理由は、我々の命や環境が後代の生物の命の源であるところにもあると思う。

2006.10

クョスコニョ    [1] 
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