社団法人日本生物工学会という学会があります。歴史は古く、大正12年(1923年)に大阪醸造学会として設立されました。昭和37年(1962年)に日本発酵工学会と改称、平成4年(1992年)に現在の日本生物工学会と改称されました。当初は酒や味噌・醤油などの発酵食品を対象としていましたが、バイオ産業の発展に伴い、微生物生産のみならず、酵素や生理活性物質、環境バイオテクノロジーなども広く対象としています。もちろんマイクロアルジェも本学会の対象であり、多くの研究者が情報交換をしています。当社も、本学会研究発表会において、マイクロアルジェの抗酸化作用やヒアルロニダーゼ阻害作用を発表しています。
学会ですので学会誌があります。学会誌「生物工学会誌」の本年第2号に、神戸大学大学院・勝田知尚先生の「CSSと微細藻による有用物質生産」と題した寄稿文が掲載されていました。
CSSって?まずこの専門用語からわかりません。Carbon Capture and Storageの略で、排出される二酸化炭素ガスを分離・回収し、地下帯水層などに封じ込め、大気から隔離する技術です。つまり、温室効果ガスである二酸化炭素を大気に放出させずに、どこかに固定してしまおうという技術です。「どこか」というのが、たとえば地下に固定するだとか、植物に固定するということです。
しかし、この固定にも膨大な費用がかかります。2005年度の日本国内二酸化炭素排出量は13億トンで、このうちエネルギー産業と工業において排出される7.6億トンがCSSにより処理すべき量だそうです。二酸化炭素ガス1トンあたり8000円で処理すると仮定しても年間6兆円のコストが発生し、製品価格に転嫁された場合の家計に及ぼす影響は、1世帯当たり年間12万円の支出増と見積もられています。
そこで勝田先生は、二酸化炭素固定能を持ち、有用物質を生産する微細藻(マイクロアルジェ)に注目しました。マイクロアルジェによる有用物質生産とCSSを並行して行うことにより、マイクロアルジェの培養を効率化しつつ、CCSのコスト負担減に役立てられないかと考え、研究を進めているそうです。
と、なんとなく難しい話でしたが、結局のところ、マイクロアルジェと太陽エネルギーを利用して、いろいろな有用物質を作り出そうという「植物科学文明」構築の考え方そのものであると思いました。植物科学文明の構築は、その結果として、二酸化炭素がこれら有用物質に炭素として固定されるわけですから、二酸化炭素ガスの削減につながるということです。
私どもが創業時から訴え、活動してきたことそのものなのです。自信を持って植物科学文明の構築を目指してゆきたいと意を新たにしたところです。
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