面白いタイトルに釣られて「できそこないの男たち」(光文社新書)を買ってしまいました。著者は青山学院大学理学部の福岡伸一教授です。目次を見ると、「第一章:見えないものを見た男、第二章:男の秘密を覗いた女、・・・」とあります。
こんな目次だからといって、いかがわしい本ではありません。たとえば、第一章は、初めて自作の顕微鏡で小さなものを観察したレーウェンフックについてです。私も微生物学の講義で彼の偉業について話をしました。彼の顕微鏡のレプリカが東京の国立科学博物館で展示されていますので、興味のある方は是非ご見学ください。第二章は、昆虫の体細胞の染色体を顕微鏡で観察したスティーブンズについてです。彼女は、メスには20個の染色体(現在X染色体と呼んでいます)が存在するのに対し、オスには19個の染色体とそれよりも小さな染色体(現在Y染色体と呼んでいます)1個が存在することを初めて発表しました。
さて、前置きが長くなりました。本書で興味深かった「第八章:弱きもの、汝の名は男なり」をご紹介したいと思います。
「どうして男性の方が短命であり、女性の方が長生きできるのだろうか。(191ペーシ)」との問題提起。私の回答は、「女性の方が良くしゃべるから。しゃべることによって唾液がたくさん出て、それが体に悪いものを排除する。赤ちゃんがその良い例。また、しゃべることによって脳が活性化される。だから、女性の方が長生き。」ですが、あまり科学的ではないのかも…。
本書では生物学的に次のように答えています。
「がんになりやすく、感染症にかかりやすい。そして寿命が短い。なぜ男はこんなにも生きるのが下手なのか。男のこの宿命的な弱さは、何に由来するのだろうか。それは、ある意味で、無理に男を男たらしめたことの副作用とでも言うべきものなのである。(199ペーシ)」「主要な男性ホルモンであるテストステロンは、免疫システムに抑制的に働くのである。(204ペーシ)」「つまり、男性はその生涯のほとんどにわたってその全身を高濃度のテストステロンにさらされ続けることになる。(略)なんという両刃の剣の上を、男は歩かされているのだろうか。(206ペーシ)」
男性ホルモンのテストステロンが、男性の寿命を短くしている要因の一つのようです。
生物は女性が基本であり、男性は派生であることが明らかになっています。種族保存を考えても、女性が基本であることは理解できます。
本書でも、「本来、すべての生物はまずメスとして発生する。メスは太くて強い縦糸であり、オスは、そのメスの系譜を時々橋渡しする、細い横糸の役割を果たしているに過ぎない。(184ペーシ)」と、分子生物学的に説明しています。基本仕様の女性からの出来損ないが男性ということで、「できそこないの男」というタイトルになるわけです。
男性諸氏、エラそうなことを言ってはいけません。男は所詮できそこないの副産物なのですから。
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