「コレステロール‐嘘とプロパガンダ‐」(篠原出版新社)を読みました。著者はフランス国立科学研究センターのミッシェル・ド・ロルジュリル教授、訳者は富山大学和漢医薬学総合研究所の浜崎智仁教授です。
訳者あとがき(312ペーシ)に、
一般向けではあるものの、本書はその性格から医療関係者でないと分かりにくい部分もある。しかし、全体を読んだとき、読者のコレステロールに関する考えが一変したのではないだろうか。精神疾患がなく、消火器がしっかりしており、肝臓病でなければ、食事がおいしいのである。そう言う人はきっと長生きするだろう。さらにきっとコレステロールも高くなるだろう。そのコレステロールは心筋梗塞や脳卒中の原因ではない!
と書かれています。
しかし、現状は、コレステロールが心臓発作や脳卒中の主原因であり、したがってこれらの心血管疾患から身を守るためにまず取るべき予防策はコレステロールを減らすことだとする「コレステロール学説」が常識となっています。
どちらが正しいのでしょうか?
1980年代後半から巻き起こった「リノール酸悪玉論争」を思い出しました。それまで、健康維持のためにリノール酸をたくさん摂ろうと薦められていたのが、ある研究グループが「リノール酸の摂りすぎは健康を害する」と発表しました。発表当時はかなりのバッシングがあったようです。私も当時はリノール酸信奉者でしたので、まさかという感は拭えませんでした。しかし、その後色々なデータが明らかになってきて、周知の通り、今では「リノール酸摂り過ぎ症候群」という言葉が出現するまでとなりました。
本書では、これまで発表された超一流医学雑誌のコレステロールに関する論文にはトリックがあることを説明しています。その一つは、臨床試験に多大な費用がかかるのですが、それを製薬企業が負担しているために、企業に不利なデータを削除しているという事実です。
また、昨年は、アメリカ製薬企業の研究データを医学部の若手医師が論文にし、共著者として教授の名前を入れる「ゴーストオーサー」事件が明るみに出てアメリカ医学会の信用が失墜しました。
こういったことを見聞きすると、本書の同じく「訳者あとがき(310ペーシ)」の
そもそも、コレステロールは本当に危険なのだろうか。本書にもあるように、医学上の問題で何十年も論争の的になっているものは、コレステロール問題しかない。なぜこんな簡単な問題が、決着しないのだろう。どちらかが正しく、とちらかが間違っているに違いない。論争が果てしなく続く理由は、本来なら負ける側に膨大な利益があるからに違いない。それこそ、まさにこの本のタイトルを可能にしている。
という内容が真実味を帯びてきます。
短絡的な結論を出すことなく、このコレステロール論争の行く末をしっかりと見守ってゆきたいと考えています。そして、健康産業に関わる企業として、これからも常に最新の情報を正確にご提供してゆく責務を強く持ちました。
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