昨年11月の研究交流クラブCOP10協賛講演会(主催:財団法人科学技術交流財団)と12月のネイチャーテクノロジー研究会(主催:モノづくり推進会議)でもお世話になった東北大学大学院教授の石田秀輝先生著「自然に学ぶ粋なテクノロジー〜なぜカタツムリの殻は汚れないのか〜」(化学同人)を読みました。
私たちは、食べ物でも生活でも一度贅沢あるいは利便性を味わうとそれを容易に放棄できなくなります。人間が持つ「生活価値の不可逆性」という欲だそうです。
石田先生は「生きることを楽しんで暮らすのが人間の本質」とし、これまで近代テクノロジーという道具を使って、便利で快適な暮らしを求めて全力で走ってきた結果、地球環境の劣化を招いたと指摘しています。そこで、
今求められていることは、我慢するのではなく、生きることを楽しみ、ワクワクドキドキしながら心豊かに暮らすことができる新しい文明創出に必要な、あらたなテクノロジー観をつくることである。それは、産業革命以来続いた地下資源文明と決別し、太陽と自然の恵みを活かす生命文明創出に求められるテクノロジーなのである。
とまえがきに記しています。
その求められるテクノロジーは、表紙折り返しに記されている、
天然のエアコンともいえる土、洗浄不要のカタツムリの殻、どんな表面にもくっつくヤモリの足、ハンマーで叩いても割れないアワビの殻・・・自然の中には近代テクノロジーでも容易に真似することのできない「知恵」がある。そんな自然を手本にし、江戸時代の粋の構造までも取り込み、精神欲を誘発するようにデザインし直すのがネイチャー・テクノロジーだ。
ということになるのでしょう。
自然界はあらゆるものを循環させ、それを持続してきました。ところが、人間が誕生して文明を持ったときに、自然界に介入してこの循環を乱してしまったと思います。地球上に存在するすべてのもの(生物も資源も)は有限です。循環させなければ枯渇してしまいます。循環型社会の構築を目指すネイチャー・テクノロジーを作り上げなければならないと考えています。
当社は、創業時から「マイクロアルジェによる人と社会と地球の健康つくり」を理念に掲げ、石油科学文明から脱却し、植物科学文明の構築を目指してきました。石田先生の「地下資源文明と決別し、太陽と自然の恵みを活かす生命文明の創出」と同じ考えであると心強く思いました。植物科学文明の構築のために、マイクロアルジェをあらゆる分野に活用してゆきたいと意を新たにしました。30数億年生きてきたマイクロアルジェには、たくさんの可能性を秘めていると信じています。
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