来年(2011年)5月発刊予定の「藻類ハンドブック〜藻類のバイオリファイナリーと豊かさを求めて〜(仮称)」(渡邊信教授(筑波大学)監修)の原稿依頼がありました。目次構成案を見ると、多くの大学の先生や企業研究者が原稿を執筆しています。依頼された担当原稿は、第2編藻類の応用:第4章食糧の中の、食用として利用される「ノストック」と「デュナリエラ」についての2稿です。MAC総合研究所山口裕司主任研究員との共著で9月末に原稿を提出しました。ノストックは髪菜(念珠藻)やイシクラゲです。編集委員の8名の先生による原稿の査読(審査)があり、何回かの修正の後に印刷という運びです。ノストックとデュナリエラの執筆を当社に依頼していただいたことを光栄に思っています。これは、当社がこれまで、マイクロアルジェ(微細藻類)について真摯に研究開発をしてきたことが認められたものと自負しております。
原稿は刷り上がりで各3ペーシなので、文字数としては多くはありません。しかし、この3ペーシを書くために、これまでに発表された研究論文の読み直しはもちろん、最近の研究論文も調査して読みました。特に、デュナリエラについての論文は久しく読んでいなかったため、デュナリエラ・サリーナのカロテノイドとデュナリエラ・ターティオレクタのグルタチオン関連の情報までしか知りませんでした。
ところが、デュナリエラの研究がかなり進んでいました。例えば、遺伝子解析によってデュナリエラの種を分類した論文が数報ありました。従来は、デュナリエラの外観や生合成する成分によって分類していました。それを遺伝子情報で分けるわけです(親子関係をDNA鑑定するのと同じことです)。デュナリエラ・サリーナと呼ばれている種が一つではなくていくつかに分類されたり、別々の種とされていたデュナリエラが遺伝子情報では同じ種であったりと、分類の分野だけを見ても大きく様変わりしていました。
一番驚いたのは、今年になって、南米・チリのアタカマ沙漠にある洞窟で、クモの巣に生育するデュナリエラが発見されたという研究論文でした。デュナリエラは、一般には汽水域から塩田などの飽和海水域まで広く生育しますが、水の中ではなくクモの巣に生育するデュナリエラがいたのです。一昔前だったら、水の中にいないからと「気生藻」という別のマイクロアルジェにされていたでしょうが、遺伝子解析の結果デュナリエラの一種として報告されていました。デュナリエラへの思い入れが強い私、このクモの巣にいるデュナリエラを見てみたいと思うのですが、チリでは・・・。
今回、本の執筆という機会に、「科学は日進月歩」であることを改めて実感しました。だからこそ、常に最新の情報を入手し、その情報を「人と社会と地球の健康つくり」に役立たせてゆかなければならないと意を新たにいたしました。
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