地球の歴史の中で、多くの生命が「共生」という営みを通して発展してきました。寄生は最終的にどちらかが不利益を被る結果となりますが、共生は両者がともに利益を得ます。そのために相手を、あるいはおかれている環境を受け入れるところから始まるのが共生です。30数億年前に誕生したマイクロアルジェが今日もいたるところに生息・繁栄しているのは、この共生によるものです。共生は、共存共栄と言葉を置き換えることができると思いますが、その根底にあるのは、上述の「受け入れる」ことだと思います。
私たちの日常生活の中においても、この「受け入れる」ことが大切だと思っています。
7月に出版された、大野勝彦さんの詩画集「はい、わかりました」(サンマーク出版)を読みました。大野さんは、45歳の時にトラクターを掃除中に手を巻き込まれ、両手とも切断。失意のどん底から、詩画を描き始め、講演も多くこなしておられます。大野勝彦美術館が熊本、大分、北海道にあります。どこか、星野富弘さんとも似たところがありますが、45歳という最も働き盛りといわれる時に起きた不慮の事故による人生の転機なので、20歳代で事故に遭った星野さんとはまた違った価値観を持っておられるのではないかと思いました。
本書の「はじめに」は、「『わかりました』の心ひとつ」と題してあります。その一文をご紹介します。
両手のない人生をはじめたわたしが、いちばん大切にしている言葉。「はい、わかりました」。たくさんの“やさしさ”を受けたわたしなりに気づいた、生き方の境地です。言われたことは否定せず、まずは受け止めよう。心を閉ざさずに肯定しよう。そうやって受け入れる人生を歩みはじめると、それまで見えなかったことが、見えるようになりました。空を見れば空の、山を見れば山の、花を見れば花の、四十五歳までのわたしには知ることさえできなかった、たくさんの「姿」が感じられるようになったのです。
まず、「わかりました」と受け入れる。ご自身の生き方を表すことによって、このことが大切だとメッセージを送っておられます。
そして、「今では、手を切ってよかったと思います」(122ペーシ)と書いておられます。そして、「人生すべて決まりごと。わたしが平成元年に手を切るのも決められていたことなら、全部受け入れて生きようと思います。」(150ペーシ)と締めておられます。
相手を受け入れる。今の状態をすべて受け入れる。とても難しいことですが、小生もそうできるように努力したいと改めて思いました。
「過去と他人は変えられないが、未来と自分は変えられる」。
大野さんのように、そしてマイクロアルジェのように、何事をもまずは受け入れる人生を送りたいです。
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