7月に、富山大学大学院・林利光教授の研究室から、念珠藻(髪菜)の研究で薬学博士が誕生しました。学位論文タイトルは「ウイルス感染症に有用な新規生物活性分子の探索」で、念珠藻由来の多糖「ノストフラン」の構造解析、試験管内での抗ウイルス作用、そして動物実験でのインフルエンザ治療効果などの画期的な研究がまとめられています。念珠藻の研究で薬学博士が誕生したことは、念珠藻に係わる私たちにとって大変な喜びです。
さて、そのうれしいニュースを持って、11月5日から8日まで、中国寧夏自治区銀川市に行ってきました。以前にも書きましたが、この寧夏では「特産の五宝」というのがあります。紅宝の枸杞(クコ)、白宝の羊皮、藍宝の賀蘭石、黄宝の甘草、そして黒宝の念珠藻です。弊社食品「阿拉善」には、念珠藻の他に枸杞が入っており、二つの宝が入っていることになります。
念珠藻の人工栽培は、これまでの3年間天津科技大学と共同研究を進めてきました。そして、昨年、日中同時に栽培法の特許を出願しました。共同研究者の一人が博士号の学位を取得して、今年度より寧夏大学の准教授となったので、今年度からは両校との共同研究を進めています。
9月から大量栽培試験を始めており、その試験状況を見学させてもらいました。また、栽培規模を拡大するための栽培施設建設予定地も見学してきました。
試験場所は、五宝の一つ賀蘭石が採掘される賀蘭山麓の拝寺口双塔(写真1:後ろは賀蘭山)の近くでした。タンクの中で念珠藻が順調に育っていました。弊社総合研究所でも同様に栽培試験を実施しており、増殖度合いなど両者に相違のないことを確認しました。
フラスコでの種培養も見学した後、そこから少し離れた拡大施設の建設予定地(写真2:遠くに銀川市街)を見学しました。ここは、銀川市の管理区域内にあるため許可なしでは入れない場所です。今回も、迷彩服を着た人が入口から一緒に付いてきました。このことは、念珠藻の栽培の安全上とても良いことだと思いました。
近辺を歩いてみたら、念珠藻が自生していました(写真3:イシクラゲも一緒に生息)。人工栽培は1トンタンクで実施する計画で、栽培後の培養液はそのまま施設周辺の地に噴霧することにより、自生念珠藻も増やすことを考えています。中国で念珠藻の採取が禁止になった大きな理由は、環境破壊でした。自生念珠藻を増やすことは環境保全であり、この人工栽培技術は、環境にも貢献する技術となりそうです。
銀川市はこれから厳しい冬に入るため、新しい栽培施設の建設は来年5月です。6月には本格的な栽培が始まります。今から本当に楽しみです。
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