総計: 1624203  今日: 143  昨日: 165       Home Search SiteMap E-Mail Admin Page
藻知藻愛(藻食文化を考える会)
日記
コラム
坂村真民先生の詩
もっと藻の話
マイクロアルジェ
 
 
 過去のもっと藻の話 
  自己紹介
    この稚拙なHPは誰の? と問い合わせがあったので・・・
  藻食文化を考える会
    藻食文化を考える会を立ち上げました
  講演会のお知らせ
    日本学術振興会181委員会
 「330000」を目指したいと思います!
「330000」
  07.05.31更新 東京藻訪ね(もだずね)飛び歩記(あるき)
 

健康食品と微細藻

 先日、マイクロアルジェコーポレーション(MAC)という健康食品会社の大会が東京で開催され、招かれた。MACを訳すと微細藻会社であろうか。多種の藻類を健康食品として利用している。例えば、前にも述べた藍藻の一種で、体力増強に効果の高いファーツァイは、日本でも普通に見られるイシクラゲと近い親戚で、モンゴルのゴビ砂漠原産である。藍藻では他に、アフリカ・チャド湖原産で良質の蛋白質が多いスピルリナも使われる。これらの藍藻は抗ウイルス作用や免疫力増進作用があることが分かっており、まさに健康食品である。緑藻類のドナリエラは海産緑藻で、βカロチンを生産する。社長の竹中裕行博士が研究され、暖かい沖縄県宮古島で大量培養されている。また、円石藻のエミリアニアは丸い細胞の表面に沢山のコッコリスという美しい模様の殻を持っている。美しいだけでなく、コッコリスには多量のカルシウム分が含まれ、カルシウムの補給に好都合である。藻類は光合成だけでなく、将来も様々な形で我々の生活を助けてくれるだろう。

 

国立科学博物館

 私は美術鑑賞が好きで、東京に行くと上野の美術館とか博物館によく行った。東京に行ったついでに今回は、久しぶりに国立科学博物館を訪ねることにした。というのは今春、神戸で開かれた藻類学会で国立科学博物館の北山大樹博士に会ったら、「新しく模様替えをしたし、花 Flower 展も開催してるので、科学博物館に来て下さい」と言われ、招待券も頂いたからである。御存知のように、上野駅から上野公園に入り右手の並木道を歩くと、通りの右側に蒸気機関車が見えて来て、その奥が科学博物館である。

 博物館にはまず、フーコーの振り子の展示があった。地球上の振り子は、重さや長さに関係なく振動面がある速さでゆっくり回転する。フランス人物理学者のフーコー(1819-1868)は、地球の自転が原因だと気付いた(1851)。言われてみれば成る程と思うが、スケールの大きい素晴らしい発見だ。振り子の回転速度は緯度に依って異なり、北極や南極では1日1回回転し、赤道では回転しない。科学博物館(北緯3542分8)では、長さ19.5メートルの針金の先に重さ約50kgの振り子を吊るしているが、約41時間で1回転するそうだ。じっと見ていると徐々に右へ右へと回転していた。北極上空から見ると、地球が左回転しているからだろう。

 日本の生物相の豊かさを示す展示もあった。日本には哺乳類が107種(うち固有種48種)、鳥類542種(固有種10種)、魚類3850種(固有種419種)、植物は5300種(固有種1800種)住んでいるそうだ。

 同じ島国のイギリスでは、哺乳類が42種(固有種0)、鳥類が日本と同じ542種(固有種1種)、魚類315種(固有種0)、植物は1623種(固有種160種)だそうだ。

 南半球の島国ニュージーランドは、哺乳類3種(固有種3種)、鳥類295種(固有種56種)、魚類1010種(固有種110種)、植物は2089種(固有種1654種)だそうだ。

 日本の生物相の豊かさ・多様性の原因は、南北に長く、亜寒帯から亜熱帯に位置し、高山と河川に富み、地形が複雑で気候も一様でないことに依る。固有種が多いのは、日本列島が大陸から比較的早く分離した為で、日本全体が天然記念物みないなものなのだ。

 日本人の起源に関する展示もあり、頭蓋骨が沢山並べてあった。母性遺伝するミトコンドリアDNAで見ると、本土日本人は沖縄人・韓国人と近く、父性遺伝するY染色体DNAで見ると、日本人はモンゴル人と近いそうだ。これは、江上波夫博士が戦後間もなく唱えた「弥生時代に渡来した北方騎馬民族日本征服説」を支持していて興味深い。しかし、DNAのパターンを詳しく見るとかなり複雑で、解釈は難しそうだった。

 多種類の大型海藻の展示もあった。アラメやカヂメは大型で分厚く、水分と一緒にアルギン酸やフコイダンを多量に含みヌルヌルしている。押し葉標本を作ると、毎日、新聞紙を取り替えても水分の吸収が遅く、標本作成中にカビが生えて困るが、さすが北山大樹さんが作られた博物館の標本はどれも綺麗だった。長さが数十メートルにも及ぶ世界一長い海藻ジャイアント・ケルプ(Macrocystis pyrifera)も天井に吊るしたりパネルにして展示されていた。北山さんはカリフォルニアで採集し、日本に運んで標本を作られたそうだが、何しろ長大なので可成りの苦労だったそうだ。展示場のスペースの問題はあるが、代表的な藻類の進化や生活史の説明があれば更に良かったと思う。

 丁度開催していた特別展、花 Flower 展では、分類学の祖、カール・リンネの肖像画があった。私は哲学的深みのある顔が好みだが、リンネはとてもハンサムで甘いマスクで、ベッカムやヨン様にも負けてないのは意外だった。日本の小母ちゃんにもてる顔だ。

 また、アフリカのナミブ砂漠原産の奇想天外(Welwitschia mirabilis)も展示されていた。裸子植物だが、スギやヒノキとは全く異なり、コンブが根元で二股に分かれたような姿である。1987年にベルリンで国際植物学会があり、当地の植物園で見せて貰って以来で、とても懐かしい。

 

油壷・東大臨海実験所

 東大は赤門のある本郷や駒場だけでなく、神奈川県三浦市油壷に臨海実験所も持つ。京大の臨海実験所の建物はパッとしないのが和歌山県の白浜にあり、私も学生の時、実習を受けたが、東大の実験所本館は19364月開館の瀟洒な洋館で、三浦半島先端付近西側の相模湾に面している。実験所の対岸はヨットハーバーで、英国人女性殺害の舞台となった洞窟は正面である。富山に帰った翌日、容疑者がこの事件では無罪となり驚いた。油壷湾は海産の動植物相が豊かで、その研究と教育を行っている。藻類学会で親しくなった野崎久義博士は東大植物の先生で淡水藻が専門である。北山大樹さんが非常勤講師として海藻の臨海実習を丁寧に指導している。良かったら油壷の実験所に来てくれ、と二人の偉い藻類学者からお誘いを受け、私は東京から油壷の磯にイソイソと出かけた。品川から京急終点の三崎口に行き、バスに乗り換え終点の油壷で降り、広い実験所構内を歩いていて道に迷った。電話を掛けたら先生の北山さん自らが迎えに来て下さった。実験所に着くと、十人近い学生が熱心に顕微鏡を覗き、スケッチをしていた。女子学生も二人いる。私も、ウミウチワの細胞やアカモクの雌雄の生殖器を顕微鏡で見せて貰って楽しかった。その夜は学生と先生を合わせて十人程でコンパを行った。京大の場合も同じだが、生物専攻の学生は皆、将来研究者になりたい人ばかりで、世代は違っても通じるところがある。しかし、学生から先生に話しかけることはあまりなく、ちょっと寂しい。

 翌朝は、北山さんに近くの三戸濱に海藻採集に連れて行って頂いた。アラメ、カヂメ、アカモク、ウミウチワ、コモングサ、シワヤハズ、アミジグサ、テングサ等々、春の海には多種多量の海藻が見られ、とても楽しかった。北山さんはバケツを持ち、あちこち夢中になって採集している。私も採集し、北山さんに手伝って貰い綺麗な標本が出来た。

 バケツ持ち カヂメアカモク アミジグサ ウミウチワ採る 春の三戸濱

 

 

褐藻類のアミジグサ(左)とウミウチワ(右)

クョスコニョ    [1] 
 前のテキスト: 07.07.03 スイゼンジノリ
 次のテキスト: 07.04.30 沖縄の海藻文化
EasyMagic Copyright (C) 2006 藻知藻愛(藻食文化を考える会). All rights reserved.