たとえ明日地球が滅ぶとも、
今日君はりんごの木を植える
映画「感染列島」(1月17日公開)で、檀れいさん演じる小林栄子WHOメディカルオフィサーが、妻夫木聡さん演じる松岡剛救急救命医に、悪性腫瘍で亡くなった弟の好きだった言葉として話した言葉です。
この言葉は、作家の故開高健さんが好んで使っていたようですが(Portrait de Kaiko 開高健「開高健記念会」)、その出典はルーマニアの作家コンスタンティン・ヴィルヂル・ゲオルギウ著「第二のチャンス」(谷長茂訳、筑摩書房)です。第二次大戦を背景としたこの小説の最後で、敵兵に囲まれた主人公の二人の会話の中に、
「どんな時でも人間のなさねばならないことは、たとえ世界の終末が明日であっても、自分は今日リンゴの木を植える」
と出てきます(360−361ペーシ)。開高さんは、この言葉の「自分は」を「君は」に置き換えて使ったのだそうです。
ところで、柳田邦男さんの「ガン50人の勇気」(文春文庫)という本があります。50余人のガン患者の闘いを描いたノンフィクションで、その最初に登場するのは、肺がんを患った原崎百子さんです。百子さんは、がんと知らされた日の日記に、「それでもやはり私はリンゴの樹を植える。昨日、『明日やろう』と決めたことをやっぱりやりましょう。」と記しました(15ペーシ)。著者は、「百子さんがドイツの宗教改革者ルッターが語ったと伝えられる『たとえ世界が明日終わりであっても、私はリンゴの樹を植える』という言葉が、若い頃から好きだった。それが、ふっと第一日目の日記にほとばしり出たのであろう。」と著しています(16ペーシ)。
また、2003年に放映された草なぎ剛さん主演のテレビドラマ「僕の生きる道」では、余命1年と宣告された主人公が、主治医から言われた「たとえ明日世界が滅亡しようとも僕はりんごの木を植える」の言葉を聞いて結婚を決意しました。
「たとえ明日地球が滅ぶとも、今日私は(君は)りんごの木を植える」
自分の意と反することが生じた場合に、それが自分ではどうしようもできないことであるならば、くよくよ考え悩んでも仕方がないのでまずもってこのことを事実として受け容れることが必要です。そして、その上で今自分ができることを一所懸命にする。リンゴの木が結実するには時間がかかります。目先のことだけではなく、未来に目を向けて今を一所懸命に生きる。私はこのように理解し、常に前を向いた人生を歩もうと思いました。
あなたは、この言葉をどのように受け取られましたか?
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