秋の夜長に、2000年に制作された「レッド・プラネット」というSF映画を観ました。SF映画が特別好きということではなく、この映画のストーリーの前提がとても興味深かったからです。
レッド・プラネットは火星(マーズ)の俗称です。2050年、地球環境破壊のため、人類は滅亡の危機を迎えます。生き残る道は、火星への移住のみ。「火星地球化計画」が打ち立てられ、藻を火星に打ち込んで、火星に酸素を作らせる計画が進みました。順調に酸素が増えていましたが、突然急激な減少が認められたため、その原因を探索するために、6名の宇宙飛行士が半年かけて火星に向かいます。そして、火星でいろいろなアクシデントに見舞われながら、原因を突き止めて地球に帰還するというストーリーです。
さて、前提は何かといいますと、「火星地球化計画のために藻を火星に打ち込んだ」ということです。藻というのは、もちろんマイクロアルジェです。
地球も誕生した46億年前は火山ガス(二酸化炭素)で酸素はありませんでした。そこにマイクロアルジェが誕生し、光合成の副産物として酸素を発生し、そのおかげで現在のような生命溢れる美しい星になりました。火星でも同様にマイクロアルジェで酸素を生産させるという、火星地球化計画は全く無理な事柄ではないように思えます。
映画では、藻が生息しているところが緑色になっていました。「火星緑化計画」という言葉が、アメリカで提唱されています。火星でマイクロアルジェを大量に栽培して、緑の大地にしようということです。それは、酸素の供給にもなるわけです。
日本では、火星のレゴリス(表面を覆う砂の意)では農業ができないので、農業のできる「土」に換えるために陸生藍藻を利用しようとする「宇宙農業」の構想もあります。
宇宙開発が少しずつではありますが、確実に前進しています。昨年4月に、ロシアのロケット・ソユーズで宇宙に4種のマイクロアルジェを飛ばしました。その一つに陸生藍藻のイシクラゲがありました。イシクラゲを打ち上げたのは、上述の「火星地球化計画」あるいは「火星緑化計画」はたまた「宇宙農業」のための第一歩と考えてのことでした。
マイクロアルジェが地球の歴史で担った役割を考えると、宇宙開発におけるマイクロアルジェの研究・開発は、とても重要なものとなるように思います。
また、この宇宙開発にかかわる研究を通して、地球の環境保全にもマイクロアルジェを応用・利用してゆきたいと考えています。
マイクロアルジェの応用・開発を通して、「人と社会と地球の健康」を守ってゆくことが私たちの理念です。
レッド・プラネットの一場面
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