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人糞肥料と東洋思想 

ゴルフ場と環境破壊
   
 バブル絶頂期、富山でも10近いゴルフ場が建設された。ゴルフ場建設は広大な面積の貴重な樹木を伐採し、日本の気候に合わない芝生の維持に大量の猛毒農薬を散布して山の生態系を破壊し、その影響は川から海へと及ぶ。農水省が1965年に出した農薬毒性に関する通達に依れば、コイを使った毒性区分で、LC50と言って半数のコイが48時間以内に死ぬ濃度が10ppm以上だと安全な農薬としてA類とし、以下、10〜0.5ppmはB類でそれに次ぎ、0.5〜0.1ppmのC類を要注意農薬、0.1ppm以下のD類を危険農薬とした。この通達は当時から農薬会社寄りの甘い基準と言われたが、特にB類の濃度範囲が広すぎる。少なくとも、10ppm〜1ppmとすべきである。また、死亡事故が相次いだ除草剤のパラコートはA類、ひどいかぶれを起こすダコニールやオーソサイドのような殺菌剤はC類で盛んに使われていた。そこで、農水省の認めている農薬が如何に毒性が高くて健康に悪いかを、反応が早くて見やすいミカヅキモでテストし、ゴルフ場関係者や、農協、農家の散布者、そして住民にも直接会い、講演会も開いた。また、一時林立したボーリング場が軒並み倒産したように、沢山のゴルフ場が経営困難に陥って倒産するだろうと、行政やゴルフ場関係者に説いて建設反対運動にも参加した。しかし、建設中止になったのは富山駅から車で2時間もかかる山間僻地の利賀ゴルフ場だけだった。そもそも、我々一般人はゴルフ場建設計画の段階で情報を得られることは殆どなく、ゴルフ場関係者と都道府県知事・市町村長との間で契約が交わされ、実際にゴルフ場の建設が始まってから知るのが常だから、建設を断念させることは不可能に近かった。しかし案の定、その後バブル崩壊で、富山のゴルフ場会員権は老舗のKカントリークラブが最高値で、一時5000万円だったのが300万円に、安値のTゴルフ場では240万円だったのが15万円と、どこも15分の1程度に下落した。どのゴルフ場も経営は苦しくなり、ゴルフ場ばかりかゴルフ場を建設していた準大手ゼネコンS工業は倒産し、会社更生法の適用を受けている。あの時、ゴルフ場関係者、ゼネコン、銀行、都道府県知事や市町村長、議員、国や地方の官僚、そして値上がりを期待して会員権を買った人達が、先見の明のあるミカヅキモの意見を聞いてくれればゴルフ場の倒産もバブルやその崩壊もなかったのに・・・。金とか権力、地位に目がくらんだ有象無象(うぞうむぞう)の人達には、ミカヅキモの声、自然の声(神の声)が聞こえなかった。性懲りもなく、今でもその様な人が圧倒的に多いのは、まことに残念である。

綺麗な人糞を肥料に 
 ところで、例外的にミカヅキモの意見を真面目に聞いて呉れた呉羽CC支配人の加藤眞樹氏から「病気に強い芝を育てるには有機肥料が良い。それも抗生物質等が入った鶏糞より人糞肥料が良い」という興味深い話を伺った。私は、環境問題上、優秀肥料の人糞はリサイクルすべきだと思ってきたが、そのまま使うのは寄生虫の多かった昔に逆戻りだ。それに私は不謹慎ながら、昔、百姓が野壷(のつぼ)から優秀肥料を汲み出して畑に撒いていると息を詰めて通り過ぎた。いくら優秀肥料でも、今更、彼等に気の毒で薦めかねる。無臭の肥料として再利用出来れば、これは理想的である。その肥料工場はすぐ近くの婦中町にあると言う。
 そこで、もう大分昔のことになってしまったが、1990年5月のある曇った日、件の立山エンジニアリングの肥料工場を、アンモニア臭を目印ならぬ鼻印に車で訪ねることにした。曲がりくねった山道には大木が並び、折しも若葉が萌え立つように茂る。ところが不思議な事に、肥料工場からの匂いがどこにもなく、散々道に迷った末にやっと工場にたどり着いた。工場長(当時)の中村富男氏に会い、人糞からどのようにして有機肥料が出来るのか、1時間半程にわたって説明を聞き、工場内(流石に工場内はアンモニア臭で息苦しかった)も案内して頂いた。肥料の原料は、家庭排水を曝気式の下水処理場で処理した後に残った汚泥である。良質の肥料を作るには、原材料の汚泥を充分に吟味する必要がある。下水処理場ならどこでも良いというわけではなく、抗生物質や重金属(体温計の水銀等)のような有毒物質を出す病院や学校(特に理系大学の実験廃液)、あるいは化学工場の排水が流入しない綺麗な下水処理場の汚泥を使う。有毒物質が入ると、発酵微生物の増殖が不十分で、結局良い製品が出来ないし、また仮に出来ても有害肥料となり、土地を荒らして良い作物が出来ない。抗生物質の入った鶏糞でも、乳の出を良くする為に入れた食塩が大量に残る牛糞でも十分に発酵せず、作物が健康に成育しない。御縁であろうか、当時私が住んでいた小杉町の人糞がこの工場の原料だった。汚泥の水分は60%以下で、この汚泥に発酵を終えた肥料を適当な割合に混ぜ、発酵槽の中に混ぜる。3〜4日で発酵はピークに達し、温度は90度を越える。汚泥の中には多くの微生物がいるが、発酵の主役の耐熱性の菌を除いた全ての菌がこの時死滅する。高温の為に水分の蒸発が激しく、徐々に汚泥は乾燥する。1週間程して温度が下がる。汚泥をもう1度混ぜ返し2次発酵させると75度位まで再上昇する。1週間程で再び温度が下がった汚泥の量は始めの半分位に減る。これを更に3次発酵させると50度位に上がり、約1週間で40度以下になると出来上がり。製品量は始めの汚泥の約3分の1である。製品は、半分を袋詰めにして出荷し、残りの半分は次の発酵に使う。こうして出来た製品は親指ないし小指の先位の堅い塊で、保水力と保肥力が良く、通気性に優れ、病原菌など雑菌がいないのでゴルフ場の芝に撒いても病気になり難く、芝の成長がとても良い。また土壌改良剤としても優れ、粘土質の土壌に3年この肥料を使うと真っ黒な土に変わるとの事で、私が便所で惜しげもなく捨てている仁糞の力は真に偉大なものである。
 以上が中村さんから事務所と工場で伺った話で、今迄邪魔物扱いしてきた台所や便所の廃棄物を有効にリサイクル再利用しているのは、環境保全や資源節約の上で大変素晴らしい。見学を終えた後、出来立てのサンプルを戴き、五月雨の降り出した山道を戻った。工場の周りは蒸発したアンモニアのお陰か、木々の緑が一層鮮やかだった。
 自然にとって綺麗だという事は、我々の考えている美醜の観念とは別で、完全に分解され、生物に再利用される物が綺麗なのだ。私は、人間が綺麗と感じるプラスチックやビニールなどは、自然にとっては汚いと思っていたが、この工場でその感を一層深くした。残念ながら現代人は、一見綺麗で本当は汚い物を増やしているように思う。頂戴した肥料を実際に家庭菜園に使ったところ、ナスやキュウリ、トマトは例年以上の成育を示し、古来お世話になってきた人糞肥料の優秀さを改めて実感した。
 哲学者にしてロ−マ皇帝であったマルクス・アウレリウス・アントニウスは、「宇宙を支配する自然は総ての君の見る物を一瞬にして変化せしめ、その物質から他の物を作り、更にそれらから他の物を作り、こうして世界が常に新たであるようにする」と述べた(自省録、岩波文庫)。古代ギリシャの哲学はキリスト教思想とは違って東洋思想と共通点が多い。古神道やアイヌの自然観(アニミズム)、老荘思想、佛教の輪廻の思想なども、自然と人間を深く観察した末に生まれた。一見、茫洋、非科学的なようで、究極的にはむしろ近代西洋科学よりも宇宙の真理を掴んだ所がある。我々は人糞も灰もリサイクルさせた日本の文化や自然にもっともっと学ぶ必要があるのではないだろうか。

除草剤のパラコートを1ppm 与えた時の接合子の様子。右の接合子は膨潤し、左は崩壊している。

 

2006.06

クョスコニョ    [1] 
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