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  ムシできぬ藻ー接合藻(せつごうそう)
 

ムシできぬ藻ー接合藻(せつごうそう)
 アオミドロとかミカヅキモという接合藻(せつごうそう)類に属する藻を、小学校や中学校の時、顕微鏡で見られた方も多いと思う。人間同様、接合藻にも男と女があり、年頃になると恋をして、雌雄の配偶子が合体する。人間の卵と精子のように、配偶子の大きさや形が違う場合、これを受精と言うが、雌雄の配偶子が同形同大の場合は接合と言う。このような生物は藻の中でもどちらかと言えば少数派であるが、接合藻類は接合を行う。接合藻の名の由縁である。
 接合藻類の細胞は大きく、長いものでは1ミリを越える。小さな物でも大抵は20ミクロン(1ミクロンは1ミリの1000分の1)ほどはあるから、5ミクロンほどしかない哺乳類の細胞や他の微細藻類に比べると大きく、普通の光学顕微鏡で美しい内部構造がよく観察できる。例えばアオミドロは葉緑体が美しく螺旋状に巻いているし、ホシミドロは星形の葉緑体が2個ある。
 接合藻は、カワズが飛び込むような古池とか、田圃、沼、あるいは川の浅瀬などに住んでいて緑色をしている。写真にあげたイボツヅミモは、富山県小杉町の私の家から歩いて10分ぐらい、北陸自動車道小杉インター近くの湿地で採集したもので、細胞の形自体が美しく、長さは100ミクロン近くもあり、貧栄養で水質の良いところに住んでいる。富栄養で有機物の多いところ、農薬や重金属などの環境汚染物質があるところには住めない。従って、接合藻が生息していることが分かると、その水には毒性がなく、水質が良いと判定できるので、環境指標生物としても使われている。

接合藻の進化学的な位置
 接合藻は、陸上植物へと進化していった緑色をした藻類の系統樹の中で、基本的で重要な根本に近い位置に属する仲間である。健康食品として有名な緑藻のクロレラなどと同様、クロロフィルaとbを持っているので、大きな意味では緑藻から陸上植物までをも含めた緑色植物と呼ばれる仲間である。しかし、細胞分裂装置、葉緑体の中にある遺伝子のDNAの構成成分である4種類の塩基の並び方、さらに世界中の酵素の中で最も大量に存在し、植物だけでなく我々動物にとっても重要な、炭酸同化作用を行うRuBPカルボキシラーゼという酵素の性質などを調べてみると、クロレラなどよりは遥かに高等で、分類学的にもクロレラとは随分離れている。これらの生化学的な性質から判断すると、アオミドロは、クロレラよりもむしろサクラやチューリップに近いほどである。さらに、接合藻と一口に言っても数千種類は優にあって、植村さんと言う若い方の最近の研究によれば、例えばミカヅキモやツヅミモは、同じ接合藻類のアオミドロよりも高等植物のホウレンソウに近い。かなりの飛躍はあるが、緑色植物全体を脊椎動物にたとえるとすれば、クロレラは魚類、アオミドロの類はより高等な両生類のカエル、イモリ、爬虫類のカメ、ヘビ、そして始祖鳥を合わせた程に多様性がある。同じ接合藻類に属するミカヅキモやツヅミモの類は、鳥類からあの卵を産む哺乳類として有名なカモノハシ、そしてネズミ程度の下等哺乳類を含めたぐらいの幅広さである。ちなみにサクラとチューリップの違いなどは、高等哺乳類のサルの従兄弟どおしのようにごく近縁である。サルの従兄弟なんて、体つきとけんかの強さが少々違うぐらいではないだろうか。
 ことほど左様に接合藻類は、甚だバリエーションに富んでいるグループである事が分かってきたが、これは接合藻類に限った話ではない。藻類全体ともなると、35億年と言う途方もなく長い時間をかけて、まるでこの大宇宙のように気の遠くなる程の大きな広がりを持っていて、毎日毎日光合成を行い、糖や澱粉、蛋白質などの有機物を生産して我々動物の食料を生産し、酸素を放出して呼吸をさせてくれている。その重要性を意識している人は非常に少ないけれど、地球上で、藻がやってくれてきた仕事ほど大きくて有り難いボランティアの慈善事業は他にはない、と私は思う。

1998.04

クョスコニョ    [1] 
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